イントロダクション
この記事では、ホテルの運営データ(重要指標)に関する基礎知識をまとめています。
これを知っていると、お気に入りホテルの経営状況を分析・推測できるようになります。
ホテル運営データの重要指標と活用事例
ホテル企業の決算開示資料で必ず目にする重要指標データの意味と実際の活用事例(読み取り方など)をまとめています。
① 販売可能客室数
客室総数から改装・修繕などで販売に回せない客室数を控除した客室数のこと
② 販売済客室数
販売可能客室数から売れ残った(埋まらなかった)客室数を控除した客室数のこと
※販売可能客室数とは異なります。
③ 客室稼働率 OCC(オキュパンシー・レシオ)<Occupancy Ratio>
販売済客室数を販売可能客室数で除した数値
④ 平均客室単価 ADR(エー・ディー・アール)<Avrrage Daily Rate>
客室総売上高を販売済客室数で除した値、1室あたりの実際販売単価を示す。
⑤ RevPAR(レヴパー)<Revenue Par Available Room>
客室総売上高を販売可能客室数で除した値、1室あたりの真の実力(販売力)を示す。客室稼働率OCC×平均客室単価ADRでも求められます。
⑥ 客室総売上高
ホテルの客室総収益額で、RevPAR×販売可能客室数 or 平均客室単価ADR×販売済客室数で求められます。
ホテル運営データの活用事例
販売可能客室数が100室である標準的なホテルを前提としています。
事例<1>:RevPAR重視の運営例
販売可能客室数:100室
客室稼働率OCC:75%
平均客室単価ADR:7,500円
■計算データ数値
販売済客室数:75室=販売可能客室数(100室)×客室稼働率OCC(75%)
RevPAR:5,625円=客室稼働率OCC(75%)×平均客室単価ADR(7,500円)
客室総売上高:562,500円=RevPAR(5,625円)×販売可能客室数(100室)
事例<2>:ADR重視の運営例
販売可能客室数:100室
客室稼働率OCC:50%
平均客室単価ADR:10,000円
■計算データ数値
販売済客室数:50室=販売可能客室数(100室)×客室稼働率OCC(50%)
RevPAR:5,000円=客室稼働率OCC(50%)×平均客室単価ADR(10,000円)
客室総売上高:500,000円=RevPAR(5,000円)×販売可能客室数(100室)
事例<3>:OCC重視の運営例
販売可能客室数:100室
客室稼働率OCC:100%
平均客室単価ADR:4,500円
■計算データ数値
販売済客室数:100室=販売可能客室数(100室)×客室稼働率OCC(100%)
RevPAR:4,500円=客室稼働率OCC(100%)×平均客室単価ADR(4,500円)
客室総売上高:450,000円=RevPAR(4,500円)×販売可能客室数(100室)
データ活用事例(数値)の読み取り方
上記の事例について、重要指標データを計算すると
⇒客室稼働率OCCは、ケース③>①>②の順に高い。
⇒平均客室単価ADRは、ケース②>①>③の順に高い。
⇒RevPARは、ケース①>②>③の順に高い。(=客室総売上高*)
これは、客室稼働率や販売単価のみを重視するのではなく、稼働率と販売単価が①のように中位(真ん中)であっても、その掛け算のRevPARが高位であれば売上最大化につながることを示しています。
*客室総売上高は、平均客室単価ADR×販売済客室数でも求めることができます。
※事例①=7,500円×75室、事例②=10,000円×50室、事例③=4,500円×100室
データを活用したホテル運営手法「レベニュー・マネージメント」
近年ではAI(人工知能)が過去の実績データやビッグデータ(例:過去と未来の天気・近隣のイベント・訪日外国人の渡航データ等)を自動分析して適切な宿泊料金を設定できるツールが登場しています。
今日のホテル収益管理で導入されているRevPARを重視する(収益最大化を目的に稼働率と販売単価をトータルでバランス調整する)手法は「レベニュー・マネージメント」といわれ、その手段として需要や供給の状況に応じて宿泊料金を変動させる「ダイナミックプライシング*」が採用されています。
ダイナミックプライシングの概念
*ダイナミック・プライシング(Dynamic Pricing)とは、商品やサービスの価格を需要と供給の状況に合わせて変動させる価格戦略をいいます。「変動料金制」「価格変動制」ともいいます。
ホテルの予約や航空券、スポーツ観戦チケットの販売などで導入されています。